大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)594号 判決 1960年7月19日

控訴人 原告 青木静男

訴訟代理人 竹内岩男

被控訴人 被告 株式会社神戸商会 代表者取締役 景山賢成 外一名

主文

原判決を取消す。

控訴人の請求を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人等の訴外池下栄市同米谷之克に対する神戸地方裁判所昭和三三年(ラ)第六一八号不動産管理命令に基いて神戸市垂水区塩屋町字平尾二四番の四宅地一二〇坪五合三勺に対してなす執行はこれを許さない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め、

被控訴人等は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に補充する外、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

証拠として、被控訴人等は乙第二、第三号証、第四、第五号証の各一、二を提出し、控訴人は当審証人木村一枝の証言、控訴人本人の当審供述を援用し、乙号各証の成立を認め乙第五号証の一、二を援用した。

理由

民事訴訟法第六八七条第二項は、競落人若くは債権者競落を許す決定ありたる後引渡あるまで管理人をして不動産を管理せしめんことを申立てたるときは裁判所は之を命ずべしと規定し、同条第三項は、債務者が引渡を拒みたるときは競落人若くは債権者の申立に因り裁判所は執行吏をして債務者の占有を解き其不動産を管理人に引渡さしむべしと規定している。

従つて同条第三項の引渡命令の執行に対し、引渡命令の執行当事者以外の第三者が目的物の引渡を妨げる権利を主張して第三者異議の訴を提起できることは当然であるが、同条第二項の管理命令に基いて管理人が目的物引渡の強制的実現をなしえないことは明かであるから、同条第二項の管理命令に対する第三者異議の訴というものは論理上成立しえないし、これを認める実益もない。

同条第二項の管理人が第三者占有中の目的物を第三者の承諾を得ないでこれを占有するときは、第三者は占有回収の訴を提起すべきであるし、同条第三項の引渡命令が発せられたときは、引渡命令の執行当事者以外の第三者にして目的物の引渡を妨げる権利を有する者は右引渡命令に基く執行に対し第三者異議の訴を提起すべき筋合である。

よつて管理命令に対する第三者異議の訴である控訴人の本訴請求は不適法として却下を免れずこれと同旨でない原判決を取消し民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井末一 裁判官 小西勝 裁判官 井野口勤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例